ルエミーザ博士の考古学講義 第十回 「灼熱洞窟」

オカルトや珍説まで取り入れると、考古学というのは宇宙にまで飛んでいくというのはこれまでの講義でも触れたと思うが、今日説明するフィールド、灼熱洞窟を語るにはそのあたりの話も思い出して聞いてもらいたい。

人間が文明を発展させるのは何が目的かということを考えたことはあるかな?
現代人の頭で考えるなら、「より便利になるために」、「増えた人口を能率よく発展させるために」なんて考えるだろうか。

ミクロな視点で考えればそれも間違いではないのだが、もっと大きく捉えてシンプルな答えを出すならば、「欲望」が文明を発展させているのである。
今言った「より便利になるために」というのも「欲望」だ。

エジプト文明のミイラは不死を求める「欲望」だし、空を飛びたい、より速く遠くへ行きたいという「欲望」が乗り物を発展させてきた。
わかるかな?
つまり人間は、人間に出来ないことにあこがれるのだ。
死なないこと、空を飛ぶこと、命を作り出すことなど。
そういう力を持っているものや自然現象などを「神」とするのも全ての文明に共通する考え方だ。

人間が地球上に住む動物とするならば、この「欲望」には意味がある。人間が目指す力にたどり着くために必要な「欲望」が遺伝子に刻み込まれているのだ。
人が生き続けて繁栄を続ける以上、「宇宙」を目指し、「命」を操ろうとするということだ。

考古学の講義にしては話が大きく飛んでしまった感じではあるが、この話は灼熱洞窟を話す上で外せないのだ。
巨人霊廟の講義のときに、「塔」と呼ばれるロケットの話をしたのを覚えているかな。
遺跡に残る石碑の情報を疑わず繋げるとすれば、巨人文明は宇宙の何者かとのコンタクトに成功し、ロケットの開発に成功している。
ロケットは成功したがロケットを開発するための目的は失敗したということもわかっている。
巨人の歴史を読むと、このロケットの開発のための紆余曲折が書かれていることがわかる。
最初は熱源をエネルギーとするロケットを作るが失敗し、次に人工の貯水池を作り水素を利用したロケットを開発している。

貯水池というのは前回の講義で触れたフィールド、空の水源のことだ。
そう、つまりこの灼熱洞窟は熱源を利用したロケット開発のために作られた溶岩プールなのだ。


ここは遺跡というよりは文字通り洞窟と呼ぶほうがしっくりくる。
岩盤を掘り起こして作られた空間なのである。
巨人の歴史から考えると、この灼熱洞窟を作ったのも巨人たちのはずである。
そうして見ると所々にある装飾は巨人霊廟の文明様式に近い。


左が巨人霊廟に並ぶ女性像で、右が灼熱洞窟のものだ。
灼熱洞窟は溶岩が溜め込まれている。
ここから溶岩が噴出しているのではなく、溜め込まれている感じだ。それが熱を失わずに残り続けている。
ということは、この灼熱洞窟の溶岩を貯蔵する機能が生きているということになる。

しかし空の水源にも灼熱洞窟にも肝心のロケットが見当たらない。
種明かししてしまうと、ここはロケットのエネルギーをためる場所であって、ロケット本体はこのフィールドからつながるどこかに存在しているのだ。
灼熱洞窟にも空の水源にもパイプのような、どこかに水や溶岩を送っているものが残っている。

もうひとつ、巨人の歴史から導かれる言葉に「母」というものがある。
巨人たちの母なのか、それとも人類を生み出した存在なのか。
その「母」を空へ帰すためのロケット作りだったわけだが、ということは「母」は空からやってきた、地球外生命ということになる。
巨人の歴史を見ただけでは生命なのかどうかもわからないのだが。
講義の冒頭で触れた、人間の欲望に「宇宙」を目指すことを刻み込んだ存在。
それが「母」だとしたらどうだろう。
しかも巨人たちが作った巨大なロケットでも飛ばすことが出来なかった巨大な存在。

少し話は変わるが、今までの話から考えるとロケットを飛ばすということは巨人たちにとっては種族をあげた一大セレモニーであったはずである。
そうするとこの灼熱洞窟もエネルギーを貯める為だけの洞窟とはいえ、神聖な場所だったはずである。
だから灼熱洞窟には所々にではあるが装飾的な要素が見受けられるのだと考えられる。

この写真を見てもらいたい。

この像は「巨人像」と名づけられている。
しかし巨人霊廟や太陽神殿にある石像よりも小さい。
さらに巨人霊廟は巨人の歴史をモニュメントとして残してあるものなので、巨人霊廟の巨人像を作ったのは巨人の後の文明だろう。
しかしこの下半身が蛇の形をした女性像は灼熱洞窟を作った巨人たちが作ったはずである。
巨人たちが「巨人」と名づける存在をかたどった石像。
何かピンと来ないかな?

正確な答えを出すには今までの講義からでは情報が不足しているのは確かだ。
しかし推測は出来るはず。各自の推測を元にこれからの講義を受けてみてくれ。
LA-MULANA遺跡の謎が見えてきたとき、その推測が正しかったかどうかがわかるだろう。

しかしこの灼熱洞窟は危ない。溶岩が残っているのはもちろん、所々の岩の隙間から火が吹き出てくる。
洞窟自体が非常に高温のためか、携帯用のノートパソコンもまともに動かなかったほどだ。
さらに溶岩の中に重要なものが隠されていることがあるのだから始末が悪い。
LA-MULANA遺跡が一般公開されても灼熱洞窟は立ち入り禁止になるだろうな。

巨人文明をより深く知るためにも重要な場所なんだがな。
この危険な場所ということを利用したのか、後の時代に隠されたと思われる宝も沢山あったんだ。
もちろん全部私がゲットした後なので何も残ってはいないけどもな。

こういう隠し部屋みたいなのがいくつかあるんだよ。
壁を見てもらうと、巨大な岩盤を削って作ってあることがわかると思う。
しかも削った跡がでかい。これも灼熱洞窟が巨人によって作られた証拠なんだけどな。

徐々にLA-MULANA遺跡の謎の全貌が見え始めたころではあるが、今日の講義はここまでだ。
しばらくは他のフィールドの紹介が続くと思うが、遺跡全体の謎を推測しながら聞いてくれるとうれしい。

ルエミーザ=小杉