ルエミーザ博士の考古学講義 第十二回 「双連迷宮」

ひさしぶりだな。さぁ、今日もはじめようか。

まじめに研究している学者は少ないが、今は存在していない大陸というものがある。
説明するまでもないほど有名な話だが、それがムー大陸とアトランティス大陸だ。
レムリア大陸なんてものもあったんだがな。これはレムールというインドネシアとアフリカのマダガスカル島という離れた地域のみに生息する動物から名前を取られていて、この遠く離れた2つの地域にのみ生息し、「かつてインドネシアとアフリカをつなぐ大陸があったのではないか?」というわけだ。

このレムリア大陸は仮説の域を出ておらず、大陸移動説によって説明がついてしまう。なにより古代文明があったという話があるわけでもないので私ですらまるで信じていない。

レムリアと違って簡単には否定できないのがムーとアトランティスだ。
まずムー大陸だが、これはジェームズ・チャーチワードなるイギリス陸軍大佐がインドで見つけた古文書から知ったという小さな話から、どんどん話が膨らんで多くの人が知ることになったものだ。
実はこのチャーチワードという人物がうさんくさい男で、イギリス陸軍にチャーチワードという人物の軍籍は残っていないそうで、話の出所であるインドの古文書とやらも発表されていない。
これだけならレムリアと同じようにインチキといいたくなるのだが、太平洋上の陸続きではない、当時船での移動も難しいであろう距離の島々に似たような文化、石造、言語、遺跡が残っていたりするのである。

有名なところだとイースター島、太平洋のど真ん中に浮かぶポンペイ島のナンマドールなど。日本の沖縄の海に眠る与那国海底遺跡もムー大陸の痕跡ではないかといわれている。

一説によると、世界大戦当時白人たちが自分達より劣るはずのアジアの人種に苦戦しているという空気を和らげるため、このムー大陸の話が利用されて広まったという話もある。「こんなすげぇ文明の末裔なら俺たちが苦戦してもしかたがない」と思いたかったわけだな。ムー大陸=白人の先祖なんて説もあったりする。

今日の本題はアトランティス大陸のほうだ。
これは出所の怪しいムーと違い、ギリシャの哲学者プラトンが書物に記述しているというからたちが悪い。アトランティス大陸を否定するということはプラトンを嘘つき呼ばわりするということになるからな。

アトランティス大陸は「ディマイオス」と「クリティアス」という書物に場所や文明の様子、政治体系などまで細かく書かれている。実はプラトン自体も伝聞でアトランティスのことを知っているだけで、「プラトンが勘違いしただけで、じつはこの島のことをアトランティスと呼んでただけじゃないの?」という説が無数にある。

有名なところでは地中海の、火山で沈んでしまったサントリーニ島。古代遺跡まで見つかっていたりするので有力説といわれているが、プラトンの記述とは位置があわない。
他にもプラトンの記述の一部に一致している場所を挙げて新説とするものが多いが、何かしらがプラトンの記述とは一致せず、無理やりのこじつけのようなものが多い。

プラトンの記述からアトランティスの位置は大西洋中央あたりという説が古くからある。ここらから何か発掘でもされればまだ信用にたる説になるのだが、いかんせん海のど真ん中だ。遺跡の探しようもない。しかしメキシコのミビニ諸島近辺の海でビミニロードと呼ばれる海底遺跡が発見されていたりするので、今後の調査に期待したいところだ。

さて、前振りが長くなってしまったが。今回の講義で紹介する双連迷宮というフィールドだが、これがアトランティス大陸に関係があるのではと思えるのだ。

先に述べたようにアトランティスと断定できる文明遺跡が発見されていないので、双連迷宮の装飾様式を見てアトランティスだ!と断定できるわけではないのだが、私が仮説を唱えるぐらいだからそれなりの根拠はあるのだ。

プラトンの記述にアトランティスの神殿の様子が書かれている箇所がある。「宮殿の柱は赤く輝くオリハルコンで作られ、黄金の装飾が施されており、床や天井は大理石で作られている」というもので、この写真を見てもらえばわかるように、文化様式は一致する点が多い。
一致どころか、この右下に見えるイルカ像や壁の装飾など、他のどの古代文明にも見られない装飾だ。

装飾物のモチーフというか、ラインが独特なのだ。草植物のフォルムからヒントを得たアールヌーボーのように、なんというか、海の波のうねりからヒントを得たような造形とでもいうのかな。

さらにはこの写真、アトランティスの守護神であるポセイドンの像のように思える。思えるのだが、下半身が蛇になっている。
下半身が蛇といえば、この双連迷宮という名前にもあるように、双子に関する古文書が多い。

プラトンの記述にもアトランティスは5組の双子が統治するというものがある。すでにこれまでの講義でLA-MULANA遺跡には巨人族、魚人族という亜人種が存在していたことがわかっている。体が魚に比べれば、下半身が蛇というほうがまだ理解できる。
実際、世界各地の神話などに下半身が蛇の怪物や神が登場している。蛇は神聖なる生き物という文化もある。じゃあ双連迷宮を作ったのは蛇族かというと、

この写真にあるように足はちゃんとあるが背中に羽の生えている人物の石造があったりする。
石碑によるとこの羽男は英雄らしく、蛇双子を助け出したなんていう逸話が書かれている。しかし今度はこっちの写真を見てほしい。

巨大な蛇人間の背中に、なんというか、奴隷を識別するためにつける焼印のような感じでLA-MULANA文字の「3」が描かれている。この「3」が何を意味するのかは知らないが、どーも助け出された双子という感じには見えない。

ここからは本当に私の仮説でしかないのだが、LA-MULANA遺跡のもっとも古い種族が蛇人間で、その生き残りを後の種族である羽人間が捕獲したのではないだろうか?
最古種族の知識を借りてアトランティスは発展し、同種に向けては双子は助け出されたという逸話を広め、双子が統治しているなんて政治形態を作り出したのかもしれない。
実際、双子が悲しんでいたというような古文書も多く見つかっているのだ。

仮説どまりで申し訳ないんだがこの双連迷宮、とにかく広いんだ。
しかも同じような場所が多くてな。遺跡自体が双子のように同じつくりのものが2つある感じなんだ。まーなんだ。つまりそういうことだ。

うん、広すぎて調査しきれていないんだ。LA-MULANA遺跡の崩壊時に双連迷宮がつぶれていなければ今後調査できることもあるだろうよ。
そうそう、未来を担う君たちに向けて課題を残しておいたとでも思ってくれたまえ。

じゃあ今日はここまでだ。
少し早いがインタビューの仕事が入っているのでね。LA-MULANA遺跡の存在が認知されてきたのか、最近私は忙しいんだよ。