ルエミーザ博士の考古学講義 第九回 「空の水源」

前に巨人霊廟の講義をしたことを覚えているだろうか。
今回講義するフィールド、「空の水源」の話をするには巨人たちの歴史を理解していないと難しいぞ。

巨人霊廟に点在する石碑を読み解くと巨人の一族の歴史を知ることができる。
その中に、「塔を空へ飛ばすために湖を運んできた」というものがある。
その湖というのがここ、空の水源である。

私は考古学以外のことはよくわからんのだが、ロケットというのは水素燃料を使って飛ぶのかな?
水から水素ってどうやったら作られるんだろうな!
この私にすらわからない水から水素を作り出してロケットの燃料にする仕組みがこのフィールドにはあるというわけだ。

しかもこの写真を見てほしい。
巨大な歯車が回っている。
この歯車が今でも動いているんだ。何万年も前の機械らしきものが今でも動いているということがまず驚きだ。
地上に残っている遺跡でここまでからくりが残っているところはないし、そもそもこんな大掛かりな機械などどの古代文明を見ても存在しない。
よくよく考えてみれば、後の世につけられたのかもしれないが遺跡の中には松明や謎の発光石みたいなもので照らされていて地下にあるということを忘れてしまいそうなほど明るい。
これらの照明装置もこの超太古の遺跡の中で稼動し続けているわけだから、なにかしらの永久機関が存在しているのかもしれない。

このフィールドはギリシャ、バビロニアあたりの文明を髣髴とさせる装飾が多い。
柱などはギリシャの神殿に近い造りをしているし、アーチ状の装飾や壁にもローマ時代の遺跡、パルミラに近いものを感じる。
床にはクノッソス宮殿で見られるような円の連なる文様が見られる。
一見ギリシャ風にまとまっているように見えるが、壁の装飾に場違いなものが幾つかある。


この模様だ。これはケルト文明の物に近い。
これまで講義したフィールドと同じように、時代も地域も広くばらついた様式が混在している。
確かにこれらの文明はすべて陸続きだし、時代も近いといえば近いが、ケルト文明はギリシャ文明とはラインの違う別文明だ。

しかしこれらの文明をひとつに繋げられそうな要素がひとつだけある。
この壁画を見てもらいたい。

この空の水源の所々に描かれている壁画だ。
魚のかぶりものをしているかのような僧侶の姿。これはバビロニアの神話に登場する半魚人オアンネスだ。

神話の時代にペルシャ湾より姿をあらわし、人間に文明を教えたといわれている。
人類史上初めて文字を使ったといわれるシュメール人は5000年前に突然巨大文明を開花しており、シュメールの文明は継続して伝えられたものではなく、何者かからもたらされたのではという説がある。それがこのオアンネスなのでは、というわけだ。
このオアンネスと呼ばれる半魚人種族がシュメール、ギリシャ、ケルトというヨーロッパに広まった文明の源流だとしたら、上陸して伝えていった文明が後の世に分裂して広まったとも考えられる。
そもそも、この半魚人種族はどのようにして生まれたのだろうか?
巨人などに比べると人間から正当な進化したものには見えない。

そういえばこのフィールドにうろついているモンスターにこういうやつがいる。

壁画のオアンネスとは若干違うというか、人類に文明を授けたようには見えない間抜けさである。
人間というよりは足のついた魚に見える。半魚人の中でも知能の弱い種族なのだろうか?

なんにせよ、こういう種族が生まれるということは、水の中に適応する必要があったのか、それとも地球が水におおわれていた時代があったのか。
そこで思い出すのがノアの洪水伝説だ。
洪水伝説は世界中の神話に存在する。それはつまり地球規模での大洪水があったのではといわれている。
天変地異なのか神の怒りなのか、大地は全て水没してしまい、わずかな人間の生き残りと、海の中で生活できる種族が生み出されたのかもしれない。

まぁこれらは全て仮説に過ぎないのだが、もうしばらく仮説のまま話を進めてみたい。

全ての地上が水没するような洪水が起こっていたとすれば、文明の断絶が起こったはずである。
ノアの伝説のようにわずかに生き延びた人間もいただろうが、文明を伝えるほどではなかっただろう。
そこに海から現れて文明を授けたオアンネス。
もしかするとオアンネスの種族はこれまでに築き上げてきた文明を後の人類に継続するために存在したのではないだろうか。
洪水の間は、巨人やその他の種族がLA-MULANA遺跡に残した高度な文明を継続して維持し続け、次の種族に継承する。
以前、導きの門の講義のときにもオアンネスの壁画が出てきたことを覚えているかな。
LA-MULANA遺跡の一部は何回かに渡って後の時代に改修されたような跡がある。
導きの門自体はオアンネスの時代より前に作られたものだろうが、地球が水没している間はオアンネスたちが導きの門に住んでいたのかもしれない。

それにしてもこのフィールドは恐ろしい造りだ。
エレベーターのような移動床に乗って上に上に上っていくところがあるのだが、こんなもの、落ちたらただじゃすまないだろうに。
何の目的で作られた部屋なんだろうか。
そのあたりをうろついてる魚人間たちがここを登れるとは思えない。
そう考えると、巨人が作り出した貯水池に魚人間が住み着いただけなのかもしれないな。

さぁ、今回の講義までに巨人、半魚人と、現生人類とは違う種族が話しに出てきた。
進化の系統の違いから数万年は離れて発生した種族だろうし、どうもこの2種族だけがこの遺跡に住んでいたとは考えにくい。
いったいどれほどの昔から存在しているのか、探求をあきらめたくなるほど歴史の長い遺跡だ。

おい、そこのうんざり顔のお前!
まだLA-MULANA遺跡の序盤だぞ!
この先もっと奇妙なフィールドが続くぞ。

ルエミーザ=小杉